営業AIツールを探すと、何十もの製品が出てきます。けれど、営業歴約20年の私が今使っている道具は、機能の多さやランキングから選んだものではありません。会話を忘れる、画面の状況を説明できない、同じPC作業を繰り返す、前回の判断が残らない。実際に困った工程へ、一つずつ足してきました。
私はもともとパソコン操作や設定、事務作業が得意ではなく、抜けや物忘れも多い方です。一方で、営業現場でお客様の意図を汲み取り、言葉にすることは自分の強みだと考えています。AIが補ったのは営業力そのものより、記録、整理、確認、資料化、反復作業を完成まで運ぶ部分でした。
結論:製品名より先に、困っている工程を一つ選ぶ
最初から全部そろえる必要はありません。私の実運用を、困りごとと最初の候補で分けると次のようになります。
メールや書類の文面を整えたいなら、まずは普段使うチャットAIで一つ作ってみる。会話を残す必要が出てきたら録音機を検討する。買い足すのは、今の道具では止まってしまう工程が見えてからで十分です。
営業のどの工程へAIを使うかは、営業のAI活用7選で整理しています
文章・書類は、6割のメモから整える
業者さんへ送るメールは、普段からよくAIに整えてもらっています。形式がある程度決まっているので、最初からきれいに書かなくても仕事になる。私の場合は、6割くらいの雰囲気で書いたものから、会社名や宛名の体裁、文の順番を整える使い方です。
この「6割」は文章の仕上がりの話です。相手の名前や約束した内容まで曖昧なまま送るという意味ではありません。誰へ、何を伝えるのかが自分の中で決まっていれば、言い回しを整えるところはかなり任せやすくなります。
書類も、作成だけでなくチェックに使っています。元になる情報と必要な項目を渡し、足りないところや食い違いを拾ってもらう。最後に読むのは私です。分からないことは送らない、という線は変わりません。
マンションの重説では、資料の記載場所を探したり、ひな形をその物件用に整えたりしています。重要事項説明書の資料探し・入力・ひな形編集にChatGPTを使う実例では、私が自分で確認して転記するところまで紹介しています。
会話を忘れるなら、録音から始める
私は2025年ごろから、カード型のPLAUD NOTEとPLAUD NotePinを営業で使っています。商談、会議、社長との会話、謝罪対応などを記録してきました。録音が残ることで、全文をその場で書き続ける不安が減り、相手の声の高さ、話すペース、声量へ注意を向けやすくなったと感じています。
営業で特に見ているのは話すペースです。小さい声でゆっくり話す方には私もゆっくり話し、早く進めたい方には端的に伝える。記録を機械へ任せられると、この変化へ集中しやすくなります。
使う前には、録音目的、通知や同意、社内規程、保存先、アクセスできる人、保持・削除を確認します。文字起こしが読みやすくても、固有名詞、数字、話者、否定表現は元音声と前後の文脈へ戻ります。
録音を取り入れるなら、使う場面と費用を分けて決める
画面の困りごとは、スクリーンショットで伝える
私が考えるAI活用の最初の分岐点は、難しいプロンプトを書けるかどうかではありません。今どこで困っていて、何をしたいのかをAIへ渡せるかどうかです。画面の説明が難しいときは、個人情報を外したスクリーンショットをChatGPTなどへ見せます。
顧客名、会社名、メールアドレス、URL、アカウント名、住所、物件情報、注文番号、ファイルパス、APIキーは写さない。画面を見せられれば、パソコン用語が分からなくても現在地を共有できます。私にとっては、ここがパソコンと会話できるようになった入口でした。
商談後の振り返りは、Claudeへ文字起こしを渡す
商談後は文字起こしをClaudeへ読み込ませ、良かった点と改善点を尋ねています。返ってきた指摘をそのまま正解にはせず、気になった箇所を深掘りし、実際の会話へ戻って確認します。
AIが見つけられるのは、確認すべき候補です。顧客の本音を見抜いた、成約確度を判定した、という使い方はしていません。誰が何を言ったか、何を合意したか、次回何を確認するかは人が決めます。
見直す対象は商談だけではありません。音声データを定期的に振り返り、部下に出した自分の指示や、上司から受けた指示も確認しています。自分では伝えたつもりになっているところを、もう一度考える材料にしています。
デザインは、複数のAIで案を出して自分で選ぶ
デザインは、一発では決められる案が出ないこともあります。私はCursor、ChatGPT、Claudeなどを使い、出てきた案の中から選んでいます。いくつか見比べて、自分が使うものを決めるところまでが私の作業です。Cursor内のGeminiにデザインを相談することもあります。
Antigravityを試してCursorへ移した判断と使い分けを見る
同じPC作業を繰り返す段階で、CodexとClaude Codeを足す
自動化の入口では、ChatGPTにそのチャット内を見直してもらい、「この中で自動化できることはないか」と聞く使い方もしています。自分から処理の仕組みを考える前に、繰り返している仕事を洗い出すところから始めています。
候補が出たら、何を入力して、何を作り、どこを自分が確認するのかを決めます。メールや指示を外へ送るところまで、一度に任せる必要はありません。まずは下書きやファイル整理のように、結果を見て確かめられる工程からです。
私はCodexとClaude Codeを併用し、社内向けの小さなツールや業務基盤に関わる仕組みを作っています。最初からコードを理解していたのではありません。スクリーンショットで状態を見せ、チャットで目的を伝え、必要な処理をターミナルから実行し、結果やエラーをもう一度AIへ戻す。この往復を覚えました。
ターミナルはチャットより偉い上司ではなく、PCへ処理を実行させる入口です。表示された文字をすべて暗記するより、何を実行しようとしているか、対象は正しいか、削除・上書き・課金・公開がないか、最後に成功したかを見る方を重視しています。
文字起こしの原文と要約を、Google Driveへ自動保存する実例を見る
前提を毎回説明するなら、保存先を分ける
仕事中の私の指示は、かなり雑です。それでも欲しい答えに近づけやすいのは、何の仕事で、誰を相手にし、どこまで決まっているかという前提を渡しているからです。毎回長い指示を書くより、先に共通の背景を分かってもらうことを重視しています。
作業が増えると、チャットを閉じた後に前回の判断が残らず、同じ説明をやり直す問題が出ました。そこでNotion、Google Drive、GitHubへ情報を残し、現在はObsidianを中心に次の作業へつなげています。
| 保存先 | 私が置いているもの | 役割 |
|---|---|---|
| Google Drive | 原文や元の記録 | 内容を確かめる正本へ戻る |
| Obsidian | 日々の判断、作業の文脈、参照先 | 次に何を見るかを示す索引にする |
| GitHub | 仕様、コード、変更履歴 | 何を変えたかを追う |
Obsidian・Drive・GitHubへ、前提と判断を引き継ぐ方法を見る
残す項目を毎回考えるのが面倒なら、Obsidianの仕事メモテンプレートと導入手順から始められます。目的、決定、次の行動、未確認事項をそろえて、次のAIへ前提を引き継ぐためのひな型です。
私が営業AIツールを増やす順番
- 今いちばん困っている工程を一つ決める
- メールや書類なら、必要な内容をメモにしてチャットAIへ渡す
- 画面の相談なら、個人情報を外したスクリーンショットから始める
- 会話を忘れるなら、同意と社内ルールを確認して録音を検討する
- 同じPC作業を繰り返すようになったら、CodexやClaude Codeを検討する
- 同じ前提を説明し直すようになったら、原文・索引・履歴を外へ残す
この順番は一般的な正解ではなく、私の実運用から整理したものです。ツールを増やすこと自体を目的にせず、今止まっている工程を一つ動かせたかで判断しています。
営業の最終判断は人が持つ
私にとって営業AIツールは、営業担当者の判断を消すものではなく、判断の前に記録と材料を戻せるようにする道具です。AIに任せるのは記録、整理、下書き、比較まで。次の項目は元情報へ戻り、人が責任を持ちます。
- 顧客の本音、感情、温度、成約確度
- 誰が何を合意したか、数字、期限、否定表現、話者、固有名詞
- 顧客対応、契約、謝罪、社外送信
- 公開、削除、上書き、課金
- 顧客情報を外部AIへ入力してよいかという会社判断
営業AIツールについてよくある質問
最初に使う営業AIツールは何がよいですか?
メールや書類を整えるなら、まずは普段使うチャットAIから。会話を後から確認したいなら録音、同じPC処理を繰り返すなら実行支援を検討します。今いちばん困っている工程を一つ動かしてから、道具を追加します。
ChatGPT、Claude、Geminiではどれがおすすめですか?
同条件で全機能、料金、上限、最新モデルを比較していないため、順位は付けません。私はChatGPTを画面と目的を伝える入口、Claudeを商談後の文字起こしの振り返り、GeminiをCursor内のデザイン相談に使っています。
CodexやClaude Codeは営業担当者にも必要ですか?
全員に必要なものではありません。同じPC処理を繰り返す、仕様を残して小さなツールへ変えたい、という段階で私は追加しました。実行前後に対象、削除、上書き、課金、公開を確認できる運用が先です。
AIへ商談の判断を任せてもよいですか?
AIの指摘は確認候補として使います。顧客の本音、合意、数字、期限、話者、固有名詞は元音声や元資料へ戻り、顧客対応や契約、社外送信などの最終判断は人が行います。

